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2021.08.04

MEDIA

【DXを語る】DX推進の要は人 競争から共創へ

繊研新聞 2021 年 8 月 4 日付

 

 ファッション業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた動きが加速している。衣服・ライフスタイル製品生産のプラットフォーム事業を運営するシタテル(熊本市)は、クラウドを利用した生産・販売支援システムを打ち出し市場を広げている。三菱商事ファッションは独自に3D・CGの技術を追求し、DSCM(デジタルサプライチェーンマネジマント)の実装を推進している。今後のDX推進に向けた変革について、両社のけん引役であるシタテル取締役・鶴征二氏と、三菱商事ファッションデジタル事業推進本部デジタル事業開発部長谷本広幸氏に聞いた。

着実なデジタル化の広がり

――業界のDX推進の課題と現状は

谷本氏/業界では3DやPLM(生産管理システム)の投入検討、導入企業がかなり増えてきています。特に3Dは商社、PLMはアパレル系企業の導入事例が多い。当社の3D・CG領域の事業は順調に推移しています。特にスポーツ、ユニフォーム分野での取り組み企業がかなり増えている。アパレル以外の靴やギアなどのライフスタイル関連やアウトドア領域でのトライアル依頼も多いです。また、EC用CGを活用した先行受注をスタートしている提携先も増えています。11月に販売する秋冬コートを、夏前に先行受注して、製造・販売する事象が着実に増えています。これは精度の高い計画生産やサステイナブル(持続可能性)にも貢献できるものです。

鶴氏/当社のシタテルクラウドは大手企業から中堅・中小企業まで幅広く使用して頂いておりデジタル化の広がりを実感しています。その一方で、多くの企業が「DXは何からやればいいの」と迷われているのが実状ではないでしょうか。また、ユーザーからの「アナログな業務フローを解決したい」との要望も多いです。これについては、当該企業の業務だけを改善しても、効率化できるものではないです。当社はこの課題解決に向けて、仕入れ先や取引先を巻き込んで、相互のコミュニケーションをデジタル化していく”PLMプラスコミュニケーションツール”を提供しています。

シタテル取締役・鶴征二氏

明確な目的、大胆な実践

――企業のDXを成功させる要点は

谷本氏/先ず、DX担当の配置が成功を左右します。DXは組織を改編しながら、新しいモデルに転換していくことになるので、そこの舵取りが重要です。アパレルの現場感があるゼネラリストを担当者として配置して、IT活用による”小さな変革”を繰り返すことが凄く大事です。現場で変革が起きない企業はイノベーションは起きない。私は商談相手に「タイムマシーンがあったらどこにいきますか」という質問をしています。そこで「過去に行く」と言う人は、DX担当としてはNGだと見ています。逆に「5年後、10年後に今やっていることを見に行く」と言う人は、ビジネスを進展するうえで呼吸が合うと見ています。

鶴氏/DXを成功させるには、トップからミドルまでの強烈なコミットと、それを実際に推進するための権限と予算が付いた専門組織の存在が極めて重要です。また、DXはあくまで手段であり、その果たした先で何を得たいのかを明確にすることが不可欠です。この目的を非常にシンプルに一般化すると、売上高向上/顧客価値向上か、コスト削減/オペレーション効率向上の2点に分けることができます。そのなかでどれに対してDXを効かせたいのかが明らかでなければなりません。一方で、DX推進に関して、突き詰めて詳細設計するとスタックしてしまう恐れもあります。ある程度の目線合わせができれば、大胆に進めることが要諦となります。

”攻め”と”守り”のDX

――「攻め」と「守り」のDXが重要になる

鶴氏/「攻めのDX」は企業にとっての競争優位や事業価値の源泉であり模倣困難な仕組みをつくることにあります。ここには高いコストをかけてでもオリジナリティーを発揮することが重要です。一方、「守りのDX」は”スピード、進化的、安価”をキーワードとして、クラウド活用で外部のパッケージを利用しながらフルスクラッチで高いコストをかけることなく、最適なコスト感で実現していくことが肝心です。当社のクラウドシステムの生産支援及び販売支援のパッケージは、「守りのDX」として導入をいただくことが多く、ユーザーによってはパッケージをご利用いただきながら個別の「攻めのDX」でもお手伝いさせていただいております。ユーザーからは「仕入れ先とのコミュニケーションが可視化されて、一気に効率化できた」とのお声を頂いています。

谷本氏/シタテルのDXは仕入れ先や販売先のパートナー起点になっている。一方、三菱商事ファッションが行う3Dモデリング事業は商品起点のDXであり、そこに事業の違いがあると見ています。シタテルはデジタルソリューションのパッケージを提案する形態。最近では、様々なソリューション展示会で人気になっている。一方、当社は特定のユーザーに対してのカスタマイズ提案が主力になっており、EC手前の商品企画や生産の部分の業務改善のお手伝いをしている。それぞれビジネスのポジションの違いはあるが、両社の事業は業界のDXに資するものだと考えます。

三菱商事ファッションデジタル事業推進本部デジタル事業開発部長谷本広幸氏

業界の未来像

――デジタル化、DXを成功するためのポイントは

鶴氏/DX推進の要は人です。DXは新しいデジタルツールを導入すれば完結するものではありません。会社の営み、仕組みを変えることと同義であり、変革に向けて、社内での啓発や育成、新しい事業にチャレンジした人への人事評価の仕組みを変えるなどの施策が必要です。

谷本氏/”デジタルはカルチャー”です。事業プロセスで組織を変革させて、業務最適化する手段だと考えます。デジタルを活用した小さな変革がイノベーションを起こし、そのゴールがDXなんです。「イノベーションは経営会議、社内会議で起きているのではない」と強調したい。全ては取引先とのブレストから始まっているのです。

――DXによる業界に未来像は

谷本氏/DXによって競争相手が共創相手になることは間違いないと考えます。相互のインターフェースによって、各社のプラットフォームの連携が進んでいく。そのなかでアパレル産業のルールが統一化されて、一気に業界のDXが進展するでしょう。

鶴氏/業界に関わるプレイヤー同士がいつでも出会うことができて、お互いが効率的に繋がり合うことができ、そこでの取引行為がストレスフリーになることを目指します。シタテルが提供するサービスを通じて、業界全体のDX推進を促していきます。

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