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2022.03.25

MEDIA

《「ファッションDXDAYs2022」共創時代のDX・三菱商事ファッション/スタイレム瀧定大阪㊥》デジタルで持続可能性実現へ 三菱商事ファッション・谷本広幸デジタル事業推進本部デジタル事業開発部長

繊研新聞 2022 年 3 月 24 日付

谷本広幸デジタル事業推進本部デジタル事業開発部長

 三菱商事ファッションは、デジタルサプライチェーンマネジメントによるサステイナビリティー(持続可能性)の実現を目指す。同社の谷本広幸デジタル事業推進本部デジタル事業開発部長は「デジタルを活用して業務改善を図る。3Dデジタルスキームを通じて、業務負担の軽減や、商流の効率化、過剰在庫の削減を推進する」と強調する。

六つのコンテンツ

 当社は3Dモデリングを軸にしながら「簡易CG」「ターンテーブル」「展示会ツール」「アニメーション」「PR動画」「EC用CG」の〝六つのコンテンツ〟への供給を行っている。3DモデリングとはCAD(コンピューターによる設計)パターンに生地の情報を加えてアバター上で3Dデータを着装させるもの。これは3Dのデジタル上で取引先を含む関係者が情報共有しながら確認、修正が出来るのでパターンやデザインの精度を向上することができる。また、リアルサンプルなどの着数を減らすことで手間と時間の削減にもつながり、サステイナブルな物作りにも資すると考える。この3Dデータはデジタル上で様々なコンテンツに連動させることになる非常に重要な役割を持つデータと言える。

 簡易CGは、3Dモデリングデータを使いながら簡易的に制作するBtoB(企業間取引)用のCGになる。素材情報を加えることで、生地の透け感やしわ感を表現することができる。中わたやダウンを使用したアパレル製品もリアルに表すことができる。これは主に展示会カタログ用にコストを抑えて作成されたもので現在、最も当社で依頼の多いコンテンツだ。特にサステイナブルへの意識の高いスポーツアパレルとの取り組みが活発になっている。展示会サンプルのデジタル化への移行もかなり進んでおり、既存販売先で3シーズン目に入った企業もある。

 「ターンテーブル」は簡易CGを360度回転させることで服全体を見ることができ、SNSやデジタルサイネージでの演出のほか、ECサイトなどのプラットフォームでの活用が進展している。「展示会ツール」はオンラインで商品を可視化できるツールであり、当社は既にこのツールを使用したデジタル展示会を3シーズン程度開催している。デジタル展示会は、開催期間や時間が限定されるリアル展と比較しても利便性の高い面があり、シーズン単位で必要なタイミングで見ることができるので非常に便利なものとなっている。

 「アニメーション」は3Dを動かすコンテンツ。静止画と異なり、商品の生地の風合いやシルエットを表現することが可能であり、デジタル展示会やSNS用のプロモーションとして活用できる。「PR動画」については本来、広告代理店が得意とする領域ではあるが、3Dデータを保有しながら商品特性を知る当社だからこそできるPR動画を提供する。

 「EC用CG」は製造過程で使用した3Dデータを活用する。最近では、アパレルメーカーなどでECを活用した先行受注にトライアルすることが活発になっている。商品供給者はここでの予約情報を分析しながら生産調整をすることで在庫軽減につながる。

4ヵ国3Dモデリスト

 これらコンテンツを作る当社の研究開発部門は、3Dモデリング作成チームと、CG作成チームで構成している。3Dモデリングチームは三菱商事ファッション本社と韓国、香港、ベトナムに3Dモデリストを配置している。ここから3Dデータを出してCGチームが六つのコンテンツを制作する役割分担がある。これらを完全な内製化のなかで技術向上と品質の平準化を図りながら、顧客からの要望に対応している。

 当社は独自に靴のデジタルスキームも構築している。アパレル製品とは異なるラスト(木型)起点のスキームだ。大手シューズメーカーのアキレスとこのほど、同スキームを使ったアライアンス契約を締結した。23年春夏向け商品からデジタル化を進めることが決まっている。

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