MITSUBISHI CORPORATION FASHION

2022.03.25

MEDIA

《「ファッションDXDAYs2022」共創時代のDX・三菱商事ファッション/スタイレム瀧定大阪㊦》”つながる”ことで業界DXが加速

繊研新聞 2022 年 3 月 25 日付

DXによる業界の変革を語る谷本氏(左)と熊西氏

 従来型のビジネスが行き詰まり、業界の構造改革、ビジネスモデルの転換が求められている。アパレル・ファッション業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)が進展した際の具体的な将来像が語られた。

製販で大幅な効率化

 スタイレム瀧定大阪・熊西充DX推進室室長

 サプライチェーンにおけるデジタル化について「サンプル検討」と「ささげ(撮影、採寸、原稿作成)業務」に焦点を絞って説明したい。サンプル作成は3Dモデリングで検討可能となり、各色見本反も簡易CGで確認できることになる。風合いなどを確かめるために1点は実際に製品化する必要はあるが、これまで行ってきたファーストサンプルからサードサンプルまでの試作品生産を抑えることができる。販売面では製品をCGで作成して、消費者に向けて公開しながら先行受注を取ることで、無駄のない物作りを本生産前に精度高く確定することが可能だ。

 商品の企画開発でもデジタルを活用できる。スワッチの取り寄せは、デジタルファブリックを使用して、ウェブサイトで検討できる。デジタルファブリックのデータをダウンロードして3Dソフトウェアの「CLO」や「ブラウズウェア」を使ってアパレルのデジタルサンプルを作成できる。ここでスタイリングや物性、品質を確認して本生産に向けた検討ができる。

 従来は、ファーストサンプルからサードサンプルまで、それぞれ実際に生地を使って作成して、これらを物流を使って運んでいる。また展示会サンプルにおいても各色見本反を使用してサンプル作成をする。その際には染色工程で水も使い、工場稼働における電力及び製品の配送の際にも物流費が掛かる。

 デジタル化を推進することで、物作りにおける各段階での判断をスピーディーにできる。これによって業務の大幅な効率化や、業界のサステイナブル(持続可能な)にも貢献できる。

無駄なく早期に精度高く

 三菱商事ファッション・谷本広幸デジタル事業開発部長

 サンプル作成については、従来はスワッチや着分の取り寄せをしてきたが、今後はデジタルファブリックのデータを取り寄せて、3Dモデリングで製品化を検討することになるだろう。

 当社の透湿防水機能素材「ディアプレックス」は約200品番のデジタルファブリックの情報を取引先に公開している。ここには生地の反射性や凹凸感、カラーなどのテクスチャー情報と物性値データもダウンロードできるようになっている。近日中に三菱商事ファッションのコーポレートサイトを通じて一般の方々にもテスト的に見て頂ける予定だ。スタイレム瀧定大阪では約5000品番の生地データをCLOとブラウズウェアの双方に対応できるようデータ化をして間もなく公開するようだ。これについても三菱商事ファッションとしてつながっていきたいと考えている。

 アパレル製品をはじめとする物の作り方は大きく変わる。3Dでデジタルプロトタイプを作り、可視化することで、サプライチェーンにおける関係者が同時にサンプルを見ることができる。例えばデザイナーが作成したデザインを、生産担当者や品質管理者が見られるようになることで、製造過程で不良品が発生しそうな箇所を事前にチェックできる。また、広報が商品を市場に訴求するにあたって、実物が生産される前に宣伝媒体の準備が早期にできる。それぞれの仕事をほぼ同時並行的に進めることができ、無駄がなく、短いリードタイムで精度の高い物作りができることになる。

 サプライチェーンがデジタル化によって〝つながる〟ことで業界全体のDXが加速することになる。

繊研プラス
https://senken.co.jp/