MITSUBISHI CORPORATION FASHION

2022.04.14

MEDIA

【ファッションDXDAYs2022】《基調講演》商社のDX・サステイナブル産業の実現のために 競争から共創へ 〝つながる〟でDXが加速する

繊研新聞 2022 年 4 月 14 日付

     谷本氏(左)と熊西氏

《出席者》

三菱商事ファッションデジタル事業推進本部デジタル事業開発部長 谷本広幸氏、スタイレム瀧定大阪経営企画本部業務推進部部長・DX推進室室長 熊西充氏

 従来型のビジネスが行き詰まり、業界の構造改革、ビジネスモデルの転換が求められている。基調講演では、アパレル・ファッション業界におけるDXが進展した際の具体的な将来像が語られた。

事業の推進、変革が大事

 スタイレム瀧定大阪の熊西氏は「当社はDXを目的としているわけではない。ビジネスをいかに推進して、どのように変革していくのかが一番大切なことだ」と言い切る。サステイナビリティー(持続可能性)の取り組みを通じて「新たな事業やサービスをつくる」「デジタルを基盤としたプラットフォームを作る」といった目的に向けてDXを推進する考えを示した。

 三菱商事ファッションの谷本氏は「デジタルを活用して業界全体の業務改善を図る。3Dデジタルスキームを通じて、業務負担の軽減や、商流の効率化、過剰在庫の削減を推進する」と強調。高度な3Dモデリングを軸にしながら「簡易CG」「ターンテーブル」「展示会ツール」「アニメーション」「PR動画」「EC用CG」の〝六つのコンテンツ〟で、多様なデジタルサービスを提供している。これらコンテンツを作る同社の研究開発部門は、3Dモデリング作成チームと、CG作成チームで構成。3Dモデリングチームは三菱商事ファッション本社と韓国、香港、ベトナムに3Dモデリストを配置している。谷本氏は「完全な内製化のなかで技術向上と品質の平準化を図りながら顧客からの多種多様な要望に対応している」と述べた。

製販の仕組みが変わる

 一方、熊西氏は「当社はDXフレームワークを順序立てて構築してきた」と説明した。スタイレム瀧定大阪は、まず社内の「ITシステム・プラットフォーム(PF)」を構築して、ERP(全社的業務統合管理)や業務効率化を図った。次に「データ・アナリティクスPF」でデータ活用と分析、ファッショントレンド・ニーズ分析を進行し、これらのデータを蓄積して販売先向けのサービスとして「カスタマー・エクスペリエンスPF」を設けた。他社との協働領域では協業先のパートナーとつながるうえでAPI(プログラム同士をつなぐインターフェイス)接続などの技術を生かしながら「コラボレーションPF」を拡大。三菱商事ファッションやグッドバイブスオンリーなど多様な企業との協業を進めている。更に、仕入れ先とつながる「エコシステムPF」も構築することで、トレーサビリティー(履歴管理)の確保につなげた。「クリエーションPF」では、社内における情報ポータルサイトを構築して、情報交流を活発化。また、3D・CGを使った5000品番超のデジタルファブリックを作成することで「製品企画段階でアパレルなどの販売先が有用に使えるようなデータを取り揃える」と語った。

 両者はDXによって製販の仕組みが大きく変わることを確信している。

 谷本氏は「アパレル製品をはじめとする物の作り方は大きく変わる」と語る。3Dでデジタルプロトタイプを作り、可視化することで「サプライチェーンにおける関係者が、ほぼ同時並行的に仕事を進めることができ、無駄がなく、短いリードタイムで精度の高い物作りができる」と指摘。熊西氏は「DXの要諦は〝共創〟。その際に大事なのは、企業間を〝つなげる〟のではなく、自然に〝つながる〟ことだ」と述べた。また、谷本氏は「サプライチェーンがデジタル化によって〝つながる〟ことで業界全体のDXが加速することになる」と強調した。

繊研プラス
https://senken.co.jp/