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2023.11.14

MEDIA

三菱商事ファッション、服の生産〜納品を見える化

2023年11月12日 日経MJ電子版掲載記事

三菱商事ファッションが運営する「THE ME」の店舗(東京・原宿)

三菱商事子会社の三菱商事ファッション(東京・港)は、クラウド上で調達、在庫、納品までのアパレル製造に関わる業務を一元管理するサービスを2024年にも本格的に始める。衣服などの生産工程のサプライチェーンを見える化し、業務効率化をめざす。ミスの発生を防ぐほか在庫の削減にもつなげる。

同社が開発した新たなシステムの名称は「ベースハブ(仮称)」。既に運用を始めており、本格導入や外販の開始に向けて準備を進めている。

アパレル業界では、発注者のアパレル企業、三菱商事ファッションのようなOEM(相手先ブランドによる生産)事業者、縫製工場、生地メーカーなどが実質的な流れ作業で工程を分担し、製品にしている。

各作業では、取引先への連絡手段がメールや電話、ファクスなど異なるケースが多い。バケツリレー型の連携体制になっており「生産工程で各企業の状況が見えず、問題があればその都度連絡を取って状況を確認する必要があった」(前田真太郎事業開発部長)。

同社は2020年に完全受注型の自社ブランドを展開するため、東京・原宿に自社店舗を開設している。セミオーダーの発注で在庫管理が煩雑なため、縫製工場とリアルタイムでデータを共有する必要があった。そのため自社で製造管理システムを開発し、改良を進めてきた。

アパレル業界の管理システムを巡っては、IT企業などがすでに参入している。三菱商事ファッションはアパレルの製造工程で商社機能を担っている。自社で開発したクラウド管理システムは実業で培った知見を生かしており「現場が使いやすく、必要な機能に特化している」(白石顕子執行役員)。

パッケージ型のシステムを提供するのではなく、顧客の課題に対し必要な機能を提案する。顧客の要望に応じて一部機能のみを使うことも可能という。

アパレル企業などが海外に発注する大量生産方式と違い、オーダーメード型のビジネスモデルは、消費者の体形や流行に合わせた多品種小ロットの生産が求められる。サプライチェーン全体で注文の内容を正確に把握し、生産状況を管理する機能が重要になっている。

国内の縫製工場は人手不足が深刻になっている。利益率が高くても多品種小ロットの発注は敬遠されがちという。自社開発のシステムを導入すれば、進捗管理の報告などの手間や製造工程上で発生するミスを減らすことができ、生産の効率化が見込まれている。

アパレル業界では自社が製造を担ったり、縫製工場に直接発注したりするケースが増えている。三菱商事ファッションは自社開発のクラウドシステムを通じてサプライチェーン全体の効率化を主導し、新たな収益源の確保につなげる。

(大西智也)

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